コウモリの驚くべき免役機構と寿命について

コウモリは、哺乳類で唯一飛行能力のある生物であり、種類は約1400種類程度に及び、洞窟、井戸、屋根裏部屋、森の中など暗いところに生息しています。また、コウモリは大きな集団で生息しているため、様々なウイルスが集団間で感染しやすく、エボラウイルス、ヘンドラウイルスや新型コロナウイルスといったかなり危険なウイルスを多く保有しています。それらのウイルスの内一つでもヒトに感染した場合、ひどい症状を伴って発症しますが、コウモリは無症状のまま、ウイルスに耐えることが出来ます。また、生物の寿命は生物のサイズに依存することが知られており、種が小さいほど寿命が短くなりますが、多くのコウモリ種の寿命は30〜40年と、同サイズの生物と比べてかなり寿命が長いことが分かっています。

コウモリの寿命とウイルス耐性の秘密は何か?ニューヨークのロチェスター大学の研究者によると、コウモリの寿命とウイルスに耐える能力は、病気と老化の特徴である炎症を制御する能力に起因する可能性があるといいます。コウモリの自然免疫応答は、PYHIN遺伝子の喪失とSTING遺伝子の変異によって、他の哺乳類と異なったサイトカインの調節がされているため、炎症反応を抑制しながら、オートファジー(自食作用)の活性化も行うため、ウイルスに耐えることが可能になっています。また、その炎症反応の抑制によって、アテローム性動脈硬化症、関節炎、神経変性、癌などの炎症によって引き起こされる加齢性疾患のリスクが低下し、長寿に繋がっていると結論づけられています。

コウモリは、様々なウイルスを保有している危険な生物として捉えられていますが、コウモリの生態を明らかにすることは、加齢に伴う状態を治療する新しい治療法及び寿命と健康寿命の促進を研究する上でとても重要です。また、コウモリのように高密度で生活し、ウイルスに耐えてきたライフスタイルの解明は、現在の最大の医療課題であるウイルスパンデミックの増加と慢性化の蔓延拡大の解決に繋がる可能性があると筆者らは述べています。

この記事に関する論文は、オンライン科学雑誌「Cell Metabolism」(2020年7月付け)に掲載されています。
「The World Goes Bats: Living Longer and Tolerating Viruses」

References:
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1550413120303144